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岩井俊二・黒沢清らが“白紙委任”で選んだ日本映画29作品を上映 国立映画アーカイブ「カルト・ブランシュ 2026」

国立映画アーカイブ(NFAJ)で、2026年12月1日から上映企画「カルト・ブランシュ 2026」が開催されます。今回の選者は、映画撮影監督の芦澤明子さん、映画研究者の斉藤綾子さん、映画監督の岩井俊二さん、同じく映画監督の黒沢清さんの4名です。選者の顔ぶれと、それぞれが選んだ作品のラインナップが明らかになりました。

岩井俊二・黒沢清らが“白紙委任”で選んだ日本映画29作品を上映 国立映画アーカイブ「カルト・ブランシュ 2026」

第一線の映画人に“白紙委任状”を託すプログラム

「カルト・ブランシュ」は、映画監督や撮影監督、研究者など、第一線で活躍する映画人に“白紙委任状(Carte Blanche)”を託す企画です。選者が自由な発想と独自の視点でプログラムを組み立てます。今回は国立映画アーカイブが所蔵する日本映画コレクションの中から、4名が自身の映画体験や創作活動、研究テーマと深く結びついた作品を選びました。

ラインナップは、映画史に名を刻む古典的名作から再評価が待たれる佳作まで、28プログラム・29作品です。日本映画の多面的で豊かな魅力を紹介します。会期中は選者によるトークやインタビュー映像も交え、各作品との出会いや選定の背景をたどります。

『浮雲』
『浮雲』

4名の選者とセレクト作品

芦澤明子さん(映画撮影監督)

芦澤さんは青山学院大学在学中に8ミリ映画の自主制作を始め、大島渚監督『愛のコリーダ』(1976)の撮影監督・伊東英男に師事しました。1980年代は広告映像の分野で活動し、1990年代以降に劇映画へ進出しています。黒沢清監督『トウキョウソナタ』(2008)をはじめ、原田眞人、大友啓史、沖田修一、深田晃司ら多くの監督の作品に参加してきました。自然光を生かした繊細なライティングと、静寂の中に不安や緊張を滲ませる映像表現で高く評価され、2026年には第79回カンヌ国際映画祭で「ピエール・アンジェニュー・トリビュート」を受賞しています。今回は、日本映画撮影監督協会(JSC)の「名作上映会」を通じて見つめ続けてきた歴代キャメラマンたちの仕事に光を当てます。選んだのは、大スクリーンでこそ真価を発揮する7作品です。芦澤さんは、これらの作品から撮影監督たちによる映像表現への飽くなき挑戦と、フレームの外へとはみ出していく人間の感情や不条理な衝動が浮かび上がるとコメントしています。

  • 『浮雲』(1955、成瀨巳喜男)
  • 『豚と軍艦』(1961、今村昌平)
  • 『飢餓海峡』(1965、内田吐夢)
  • 『無常』(1970、実相寺昭雄)
  • 『仁義なき戦い 広島死闘篇』(1973、深作欣二)
  • 『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』(1973、山田洋次)
  • 『火まつり』(1985、柳町光男)

斉藤綾子さん(映画研究者)

斉藤さんは明治学院大学名誉教授で、カリフォルニア大学ロサンゼルス校でPh.D.(映画学)を取得しています。フェミニズム映画理論やジェンダー批評の視点から、ヒッチコック論、ファスビンダー論、アケルマン論、田中絹代論のほか、戦後日本映画のジェンダー+セクシュアリティ、女性監督や女優についての論文やエッセイを幅広く執筆してきました。単著に『撮られる女/撮る女』(青弓社)、(共)編著に『映画と身体/性』(森話社)、『映画女優 若尾文子』(みすず書房)などがあり、「ふぇみん」で映画評も担当しています。今回は、国立映画アーカイブでの研究調査のための特別映写観覧を通じて出会った作品群から、特に強い印象を残した8作品を選びました。テーマは、歴史の中で周縁化されてきた存在に着目し、差別や抑圧に様々なかたちで抗う人々の姿を見つめた日本映画です。

  • 『からゆきさん』(1937、木村荘十二)
  • 『煉瓦女工』(1940、千葉泰樹)
  • 『肉体の門』(1948、マキノ雅広)
  • 『赤線基地』(1953、谷口千吉)
  • 『女ばかりの夜』(1961、田中絹代)
  • 『おなじ太陽の下で』(1962、望月優子)
  • 『ここに生きる』(1962、望月優子)
  • 『骨までしゃぶる』(1966、加藤泰)

岩井俊二さん(映画監督)

岩井さんは1963年、宮城県生まれです。1988年からドラマやミュージックビデオ、CFなど多方面の映像世界で活動してきました。1993年には、フジテレビ『if もしも』の一作品として放送された「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」で日本映画監督協会新人賞を受賞しています。1995年に初の長篇映画『Love Letter』が公開されました。その後も『スワロウテイル』(1996)、『リリイ・シュシュのすべて』(2001)、『花とアリス』(2004)、『リップヴァンウィンクルの花嫁』(2016)、『チィファの手紙』(2018)、『ラストレター』(2020)、『キリエのうた』(2023)などを発表しています。今回のテーマは「気配の映画たち」です。戦争、敗戦後、死者、血、旅芸人、老いと恋、青春と性の気配を挙げ、自身が愛してやまない映画には「ただならぬ気配」と「独特な余韻」があると語っています。

  • 『陸軍』(1944、木下惠介)
  • 『黄色いからす』(1957、五所平之助)
  • 『はなれ瞽女おりん』(1977、篠田正浩)
  • 『サード』(1978、東陽一)
  • 『ツィゴイネルワイゼン』(1980、鈴木清順)
  • 『ヒポクラテスたち』(1980、大森一樹)
  • 『会社物語 MEMORIES OF YOU』(1988、市川準)

黒沢清さん(映画監督)

黒沢さんは1955年、兵庫県神戸市生まれです。立教大学在学中から8ミリ映画を撮り始め、長谷川和彦、相米慎二に師事しました。1997年の『CURE』で世界的に注目され、2000年の『回路』で第54回カンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞しています。2008年の『トウキョウソナタ』では同映画祭「ある視点」部門審査員賞、2014年の『岸辺の旅』では同部門監督賞を受賞しました。2020年の『スパイの妻』は第77回ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞に輝いています。最新作は『黒牢城』(2026)です。今回は、ふと空いた時間に思い巡らせて「これは面白かったな」と頭に浮かんだ映画の中から選んだといい、どれも自身の「思い出の映画」だと明かしています。また、これから映画をつくりたい人や、いままさにつくろうとしている人たちに観てもらいたいという意識も、どこかにあったかもしれないとコメントしています。

  • 『祇園の姉妹』(1936、溝口健二)
  • 『蜘蛛巣城』(1957、黒澤明)
  • 『日本の夜と霧』(1960、大島渚)
  • 『マタンゴ』(1963、本多猪四郎)
  • 『座頭市牢破り』(1967、山本薩夫)
  • 『四谷怪談 お岩の亡霊』(1969、森一生)
  • 『仁義なき戦い 代理戦争』(1973、深作欣二)
『豚と軍艦』
『豚と軍艦』

開催概要

上映スケジュールは、国立映画アーカイブの公式ホームページで11月上旬に公開される予定です。チケットの詳細もホームページで確認できます。

  • 企画名:カルト・ブランシュ 2026(英題:Carte Blanche 2026)
  • 会期:2026年12月1日~12月27日(日)※月曜休館
  • 会場:国立映画アーカイブ 長瀬記念ホール OZU(2階)
  • 主催:国立映画アーカイブ
  • お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)

出典:文化庁